2022年4月28日にラジオで放送された、ニッポン放送「垣花正のあなたとハッピー」の中の人気コーナー「中瀬ゆかりのブックソムリエ」に関する情報です。
中瀬さんが、
「海老蔵さんにも読んでほしい」
と紹介した、江戸歌舞妓の若きスター七代目市川團十郎の波乱万丈の役者人生を描く時代小説とは?
『中瀬ゆかりブックソムリエ』作者の仁志耕一郎とは?
今回、中瀬さんが紹介したのは仁志 耕一郎(にし こういちろう)さんの時代小説でした。
作者の仁志耕一郎さんは、広告会社を経て2002年に廃業。47歳を過ぎてから小説家をめざし、10年後の2012年『玉兎の望(ぎょくとののぞみ)』で第7回小説現代長編新人賞を受賞。
同年に『無名の虎』で第4回朝日時代小説大賞を受賞され、作家デビューされた方です。
『中瀬ゆかりブックソムリエ』7代目團十郎を描く本格時代小説
その仁志 耕一郎さんが七代目團十郎を描く本格時代小説「咲かせて三升の團十郎(さかせてみますのだんじゅうろう)」が紹介されました。
咲かせて三升の團十郎
江戸時代に活躍した七代目團十郎の物語です。
令和の今、海老蔵さんの十三代市川團十郎の襲名が注目されていますが、
「海老蔵さんにも読んでいただきたい」
と、中瀬さん。
海老蔵さんもいろいろと言われていますが、七代目も波乱万丈で、多くの女性と浮名を流し「芸と女にどっぷり生きた」人生でした。
火事で奥様と長女を亡くされるという悲劇もありました。
また、三代目の尾上菊五郎との確執。
三代目坂東三津五郎の妻で、多くの役者と密通した江戸時代の悪女して名高い「おでん」との出来事。
贔屓筋との関係で女性関係も派手だったよです。
人気も出るし、家庭ももめる。「女遊びは芸の肥やし」と言われる当時でも、かわら版でのバッシングなどがありました。
そんな中でも團十郎は、素敵な女性と出会っており、その女性がもう一人の主役のようにも描かれています。
歌舞伎の手引書にもなっていて、今にも通じるものがある。
事実をベースにしているが、ミステリーの部分もある。
後半である大事件が起こるのですが、作者独自の解釈で小説として昇華させており、「きっと、こうだったんじゃないか」という説得力で書かれているそうです。
キャラクターがすごく魅力的に書かれている。登場人物がみな、知っている名前(尾上菊五郎とか中村歌右衛門とか)で、構成が上手い。ぐいぐい引き込まれていく。
歌舞伎好きにもたまらないが、数回しか歌舞伎を観たことがない者でもわかるような書き方。
江戸時代の歌舞伎界のことがよくわかるが、今にも通じる部分があり、團十郎という名前の持っている「怖さ、凄さ」もわかる。今に重なってくる部分も沢山ある。
・・・とのことでした。
あわせて読みたい
この本の紹介を聞いて、私が思い出したのは宮尾登美子の「きのね」です。
「きのね」は今の海老蔵さんのお祖父様にあたる11代目の市川團十郎と、その妻(再婚相手)の千代さんをモデルに創作されたフィクションです。
あらすじはほぼ実話ですが、細部はかなり宮尾登美子さんの創作で書かれており、11代目の市川團十郎がすさまじい癇癪持ちで、すぐ女性に手を上げる部分など、かなりエンターテイメントに描かれています。
そのため出版後、歌舞伎界とも揉めたとかいうウワサもありますが、さすが宮尾ワールド全開で、小説としては読み応えがあります。
戦後まもないころに、空前の「海老さまブーム」を巻き起こした11代目の市川團十郎。
残念ながら11代目の市川團十郎を襲名後はわずか3年で、胃がんにより死去されています。
「お祖父様に似ている」
と言われ続けた現在の海老蔵さん。
ご自分でも「最近祖父に似てきた」と自覚され、自他ともに認める海老さまの再来ですが(そりゃ、孫だからDNA的にもあたりまえだけど)、コロナ禍による團十郎襲名の延期や、ここ最近の騒動などを思うと、今後もいろいろと心配事が多いですね。