松本清張『家政婦は見た』徹底解説|あらすじ・登場人物・ドラマ化情報まとめ

  • URLをコピーしました!
※当ページのリンクには広告が含まれています。

 松本清張の名作ミステリー『家政婦は見た』は、平凡な家政婦の目を通して描かれる人間模様と社会の裏側が魅力の作品です。

 本記事では、作品のあらすじや登場人物、ドラマ化情報、原作の見どころまで詳しく解説します。
 初めて読む方も再読する方も楽しめる内容です。

目次

松本清張原作『家政婦は見た』のあらすじと物語の概要

 「家政婦は見た」は、1983年から2008年までテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」で放送されたテレビドラマシリーズ。全26回。大映テレビ制作。主演は市原悦子。
 第1作は松本清張の小説『熱い空気』を原作として、1983年7月2日に放映された『松本清張の熱い空気 家政婦は見た! 夫婦の秘密「焦げた」』でした。

 第2作以降は副題の「家政婦は見た!」のみを引き継ぎ、主人公の名を変更した上で柴英三郎のオリジナル脚本で制作されました。

 「熱い空気」が収録されている松本清張の本はこちら。
 表題作となっている「事故」と「熱い空気」の二作が収録されています。

 ちなみに、市原悦子さんのドラマ版「家政婦は見た!」は第一作が好評だったことからシリーズものとなります。

 しかし、第一作の原作者である松本清張は、続編を書くことを断ったそう。「制作陣と清張サイドで主張に食い違いがあった」とも言われています。

【動画配信はこちら】
「市原悦子の家政婦は見た シーズン1」

 なお後続作品として制作された、松嶋菜々子さんの「家政婦のミタ」や、松岡昌宏さんの「家政夫のミタゾノ」はタイトルのみパロディ的に「家政婦は見た」風につくられたものであり、松本清張の原作とは無関係です。

主な登場人物とその関係性

家政婦

 物語の視点となる主人公。目立たない存在ながら家庭の秘密や社会の矛盾を敏感に察知します。

雇い主の家族

 それぞれの家庭事情や性格が描かれ、家政婦の目線を通して複雑な人間模様が浮かび上がります。
 松本清張原作「熱い空気」では大学教授の一家。
 テレビシリーズでは、様々な「家政婦を雇っているような、いかにもな富裕層」の家族が描かれる。

「家政婦は見た」の原作 松本清張「熱い空気」のあらすじ

 以下、松本清張の「熱い空気」のあらすじです。

 夫の浮気が原因で離婚した河野信子は、身寄りもないことから派遣の家政婦として働いている。

 ある時、信子は派遣された大学教授の一家「稲村家」で主人の浮気を知る。
 信子は稲村の妻や子どもに酷い扱いを受けた腹いせに、稲村家を不幸に陥れようと画策する。

 信子の計画通り祖母は入院。出張に出掛けた主人は、浮気相手との旅行が妻にバレる。

 騒動となって、夫妻が留守なのをいいことに長椅子でくつろぐ信子。
 出前の天丼までとって、味わっているところに、稲村家の三男坊、健三郎が放った矢が信子に致命傷を与え・・・

 というのが松本清張「熱い空気」のあらすじです。
 派遣先の稲村家の主人は大学教授という職業ですが、そこのあたりはあまり詳しく書かれておらず、ただ、大学教授という職業を鼻にかけるようなところが主人にも妻の春子にもあって、家政婦の信子は恨みつらみをつのらせていきます。

 最後は「頭のなかに火箸を突っ込まれたようになった。痛いという感覚でなく、眼の玉が飛び出そうな灼熱を感じた」とあり、子どもがテレビの西部劇を真似てつくった竹の矢が耳か頭に刺さったようなのですが、はっきりとそう書いてあるわけではなく、なんとなくその前の描写から推測して、わかるような結末になっています。

 信子という女は、ものすごく稲村一家、特に妻の春子に嫌悪感を抱いていて、皆不幸になればいいと思っていたような、ちょっと、いや、かなり性格の歪んだ女として描かれています。

 その歪み具合は市原悦子さん演じる家政婦とも、のちに制作された米倉涼子版の家政婦とも違って、あくまでも原作小説の中の話ですが、もっと暗くてネチネチして、時にはものすごくガラの悪い女性像になっています。

作品のテーマと松本清張のメッセージ

 「家政婦は見た」は単なるサスペンスではなく、社会の不条理や人間心理の深層を描く作品です。

 清張の社会派ミステリーの特徴である「日常の裏に潜む謎」を楽しみながら、当時の社会状況や倫理観も理解できる内容です。
 
 私個人の感想としては、下積み生活が長かった松本清張の、富裕層、上流家庭に対する恨みつらみを、家政婦の主人公を代弁者にして語らせているような気がします。

 ただしラストはその主人公がひどい目にあうことからも、
「どんな相手であれ、恨みつらみを募らせて、嫌がらせのようなことをすると、自分自身もひどい目にあう」
 という「人を呪わば穴二つ」的な教訓ともなっています。

 松本清張自身が、若い頃の印刷所での見習い生活や、新聞社での版下画工としての日々で、多くの「上から目線」の人々と遭遇し、そういった人々に怒りや憤りを感じたはずです。

 だが清張はそれをマイナス感情としてとらえて卑屈になることなく、逆に自分自身が成長するためのバネとして利用した。だからこの物語の主人公のような、悲劇的結末はむかえていない。

 作者の背景や人生を知ったうえで、主人公と作者との違いや対照的な展開を作品の中から感じ取ると、さらに楽しむことができます。

  • URLをコピーしました!
目次