「あー、面白かった」
観終わった直後の私の感想はそうだった。
しかし、これだけでは終わらない。
「あの細木数子の自宅のロケ地、どこだろう」から始まって、私ひとりの「今頃来た細木数子ブーム」が始まった・・・・
「地獄に堕ちるわよ」参考文献『魔女の履歴書』の感想
まず「地獄に堕ちるわよ」の参考文献となっている本。溝口敦の『魔女の履歴書』を早速読んだ。
「実話は、どうだったの?」
が知りたいからね。
ドラマ以上に、面白い。読みだしたら止まらない。「それから、それから」と1日で読み終えた。事実は小説より奇なりで、こっちの方がドラマの何倍も面白かった。
よほど売れているんだろう、Amazonではずっと文庫版は「在庫切れ」になっている。私は電子書籍で読んだ。
「地獄に堕ちるわよ」の実話との違い
最初から「虚構」のドラマとは違う。
ドラマでは戦後の焼け野原で、貧しいおでん屋を家族で経営。数子はいつも飢えており、その飢えや貧しさが、のちの細木数子の「強慾」「貪欲」につながったような描き方だ。
事実は全然、そんなんじゃない。
実家は渋谷の百軒店に3軒も店を持っていた。そのうち2軒を戦後売り払い、残った1軒で「表向きはおでん屋」を営みながら、裏では別の家業でしっかり稼いでおり、稼ぐ手段はともかくとしても、数子は貧しくなんかなかったはずだ。
父親は終戦間際に亡くなっているが、その時点で70歳。おそらく戦時中も、体は弱っており、稼げてはいなかったのだろう。その反面、数子の母親が商売上手だったに違いない。
父親の死後にも、母親には3人のパトロンがいたと「魔女の履歴書」にある。ドラマの中で富田靖子が演じていたような、気弱そうな影の薄い女性ではななかったようだ。
著者の溝口敦は「日本における組織犯罪問題の第一人者」と言われているだけに、いわゆる「暴力団」の世界に精通している。
細木数子と暴力団との「ずぶずぶ」の関係が、これでもかというくらい書かれている・・・・・・が、それを読んで、
「細木数子、ひどい女だ!」
という気持ちにはならない。少なくとも、私は。
女が金を儲ければ、いつの時代であれ「悪の手」が伸びてくる。事実細木数子も、詐欺にあって大金を騙し取られている。巨万の富を得たら、どうしたって「用心棒」が必要になるのだろう。
「すっ堅気」て言葉、どこで私は覚えたのかな・・・。
間違いなく山口洋子の本だろう。「座っただけで、チャージ料ウン十万円」と言われる、今はなき銀座の「超」高級なクラブ「姫」のママが山口洋子だ。山口洋子の本を沢山読んだけど、よく「すっ堅気のOL」なんて表現が出てきたっけ。
そんな伝説の銀座のクラブのレジェンドママだった山口洋子も、安藤組の組長・安藤昇の愛人だった。ヤクザにもね、いいやくざと悪いヤクザがいるんですよ。ヤクザと付き合いがあるから即「悪い奴だ」てのは、世知辛い世の中になったものだ、と思う。
細木数子がヤクザと「黒い交際」があることを理由に、表舞台から消されるんだとしたら、山口洋子や美空ひばりや高倉健だって、同じじゃないか。一昔前の芸能界なんて、皆、大なり小なり、裏社会のお世話になっているはずでしょ。
そしてね、本当に知りたかったことは「魔女の履歴書」には少ししか書かれてなかったね。そこが残念だった。
細木数子はどうやって占い師になったのか?
私が一番知りたかったのは、
「細木数子はどうやって売れっ子の占い師になったのか?」
だ。
「地獄に堕ちるわよ」では、金づるだった島倉千代子との縁が切れたあと、占いに興味をもった数子が、独学で占いを勉強する。数子は普通なら10年はかかる占いの勉強を、1年で収めたという。
自分のお店で客を実験台として占って手を応えを感じたあと、あっさり占い本を出版。本はあっという間にベストセラーになって「占い師・細木数子」が世間に認知される。そこから先はもう「占い師」としての細木数子の爆進が始まる。
細木数子と占い師・神煕玲の本当の関係は?
実話では数子の元から島倉千代子が去ったあと、「勝手にしやがれ」と仮題をつけた自叙伝・半生記を出版したかった細木数子。このあたり私的な解釈としては、数子には、作家としても売れ始めていた山口洋子に嫉妬や憧れがあったのかもしれない。
山口洋子の最初の本「半ダースもの情事」が世に出たのが1981年。細木数子の最初の占いの本はその翌年に出版されている。銀座のクラブをかつては3軒も経営していた細木数子だ。同じような身の上の銀座のクラブのママである山口洋子が本を出して、話題になるのなら「あれくらいなら、私にだって書けるわよ」と思った・・・・んじゃないか。
「魔女の履歴書」に、山口洋子のことは出てこない。山口洋子憧れで、細木数子が自叙伝を書こうとしたというは、私の勝手な推測にすぎない。
「魔女の履歴書」によると、数子は自作の原稿を出版社に持ち込んだが「これじゃ出せない」と出版社社長が判断した。つまり、自叙伝としての魅力はなかったのだろう。
「あんたは占いをやるそうじゃないか。いっそ占いの本でも出せばいい」
出版社社長は、自叙伝を出したくないばかりに口実としてそう言ったまでだった。
出版社社長が苦し紛れの逃げ口上で言った「占いの本」が、その後の細木数子の人生を変える。
当時、細木数子の店(赤坂のディスコ「マンハッタン」)では神煕玲(じんきれい)という占い師が雇われて、店の片隅で客相手の占いをやっていた。店のサービスだった。やがて神煕玲は店から手を引いたが、細木数子は自分の店で、神煕玲の見様見真似で素人占いを始める。
出版社から「いっそ占いの本でも出せば」と言われた細木数子は、すっかりその気になって神煕玲から占術の資料を借り出し、本当に占いの本を出版してしまったのだという。
しかも神煕玲と細木数子の関係は、「地獄に堕ちるわよ」で生田斗真が演じた細木数子の内縁の夫「堀田雅也」つながりだった。
実話では細木数子の内縁の夫だった小金井一家の八代目総長の堀尾昌志という人物がいる。その内縁の夫の親分が小金井一家四代目の田中松太郎。その長女が神煕玲なのだ。つまりドラマ上でざっくり言うと、生田斗真の世話になった親分の娘が占い師だったと。
神煕玲は1954年に師事した「0学占術」を皮切りに、30年以上にわたって「真気学」「算命学」「四柱推命」など、占いを学び続けて極めている占い師だった。細木数子はその神煕玲がまとめた占いの資料を「自叙伝を書くための資料にしたいから」と言って借りて、出来が上がったらその本は、自叙伝ではなく占いの本だったという。「魔女の履歴書」にはそのあたりが、神煕玲のインタビューで語られている。
さらに、占いの本は出版社の社員が二人がかりで手助けしたというから、細木数子が最初に出版した占いの本、ごま書房『六占星術による運命の読み方』は、占いの素人が見様見真似で書いた、デタラメの占い本ということになるらしい。
とても不思議なのは、そんな「なんちゃって占い師」が書いたデタラメの占いの本がベストセラーになったことだ。なぜそんなに、細木数子の占い本は売れたのか。何が、それまであった占いの本とは違ったのだろうか?
「魔女の履歴書」によると、細木数子の最初の本「六占星術による運命の読み方」は70万部のベストセラーになった。同じごま書房から出したもう1冊の本と合わせて、最終的には200万部も売れたという。
本が200万部も売れたとなると、大先生である。
そこから先は「あの200万部の大ベストセラーの占いの本を書いた占い師」という肩書で、なんだってやれる。霊感商法だろうが、墓石商法だろうが、やりたい放題だ。
「細木数子というのは神煕玲の占いの資料をパクって六占星術という本を書いた、悪い女だ」
現在ではそう言われている。では神煕玲の本はなぜ細木数子ほど売れないのだろう。「こっちが本物」という真実が伝わったとしても、世の中は求めていないらしい。とても不思議だ。
ドラマも「虚構」かもしれないが、占いも「虚構」だ。
現実と虚構のあいだにこそ「真実」がある・・・・みたいなことを言ったのは、寺山修司。細木数子の占いも「虚構」だったと思う。そして30年以上にわたって占いを極めていた神煕玲の占いこそ「真実の占い」だったのだ。
ところが人間というのは、100%の真実を受け付けないらしい。「水清ければ魚棲まず」の言葉にも似て、本物の占いは人を恐れさすのか、敷居が高いのか、遠ざけられてしまう。
どこか嘘くさく、外れてばかりの占いの方が、人に愛させるということか?
結局、細木数子の「六占星術」というのも、本物の占いを元にしたエンターテインメントなのかもしれない。そして、本物の占いよりも、世の中は「エンターテインメント」が好きなんだろう。
どこかで虚構が混ざっていると感じつつも、それを受け入れる。そしてそれを体現している細木数子という人物がウケたのも、皆どこかで「虚構」と知りつつも、楽しんだだけのことだ。
ある時期からは「ベストセラーの占い師」から拍車がかかって「お金持ちの占い師」になった。
「あんなにお金を儲けたのだから、あの人の占いのとおりにすれば、自分も儲かるかも。お金持ちになれるかも」
というプラシーボ効果はすさまじい。
言っていることが多少変でも、自然治癒力のようなものが引き出されて、
「先生のおかげで、幸せになれました!」
という人が急増したことだろう。
今、よみがえる細木数子
結局私は、細木数子のことが嫌いにはなれなかった。
「地獄に堕ちるわよ」の最初の方で、ダンスシーンがあるけど、細木数子という人は最後まで、いや、あの世に行ったあとまでも「細木数子の人生劇場」というダンスを踊り続けているショーガールに見える。めいっぱい派手なステージで、客を魅了する、踊り子だ。
私はもっと細木数子が知りたくなって、最初の本「六占星術による運命の読み方」の古本をネット注文した(まだ届いていない)。復刻版で再出版したらいいのに。
それからKindle Unlimitedで読める本を探したら、沢山あったので早速読んだ。
細木数子の『幸せになるための先祖の祀り方』を読むと、とにかく墓をつくる必要性に迫られ、居ても立っても居られない。細木数子が生きていたら、完全に私など、カモにされていただろう。
個人的な事情だが、実は訳あって数年前に両親の「墓じまい」をした。某所のお寺に40年間、祖父母と両親の墓があったが、身内のゴタゴタで「墓じまい」を余儀なくされ、両親の遺骨は今、私の弟の自宅にそのまま保管されている。
「オレは別に、気にしない」
と弟は言っているが、そのまま押入れに骨壺を仕舞っておくわけにもいくまい。しかし細木数子の本を読んでいると、借金してでも今すぐ新しい墓を建てずにはおれなくなるのが怖い。なので本はサブスクなのをいいことに、途中で読むのをやめた。
次にKindle Unlimitedで細木数子の『親と子の六星占術』を読む。子に問題があるのは親に問題があるからだ。先祖供養をちゃんとしないような親だから、子にも問題が出てくるなんて書いてあると、また弟の家にある親の遺骨が気になって、読む気も失せる。
本の中でおそらく「ガリ勉」と言いたかったのだろうが、ある少年の事を説明する場面で「がりがり亡者というわけではない」と言っている。ガリ勉とがりがり亡者とはまったくの別物。このあたり編集者の確認作業はどうなっているのだろうか。
非常に独特な言語感覚を持っていると言いたいが、平たく言えば「言葉を知らない」とも言える。
さらにKindle Unlimitedで細木数子の『六星占術 大予言』を読む。1995年から97年に関東大震災が起こるとか、1999年に第三次世界大戦が起こるとかあって、最後はやはり先祖供養の大切さを解いている。
自分がピラミッドに観光で行った際に思ったこととして、内部をあばいて観光客にさらしているなど、「国を興し、国を発展させた指導者のお墓を、あんなに粗末に扱っている」と批判し、「エジプトが先進諸国から取り残されている原因の一端が理解できた」とまで書いてある。逆の意味で読物としては興味深い。昭和63年に出版された本だが「もうすぐ昭和が終わるかもしれない」とはどこにも書いてなかった。
正直、占いのページは全部読み飛ばした。
占い以外のページには、博覧強記と言っても過言ではないほど、天変地異から政治・経済、芸能界のゴシップまで、ありとあらゆる話題が網羅されている。
高卒のワタシが言うのもナンだが、高校中退の細木数子にこれほどまでの知識や学力があるのが驚きである。一流の銀座のママは「毎日新聞を5誌読んで、あらゆる情報がインプットされている」というから、細木数子もきっと銀座のママ時代に豊富な知識を蓄えたのであろう。
でなければ、ゴーストライターが書いたのかもね。
実際、真偽は定かではないが、自分はゴーストライターだったという人もいる。
細木数子についてはゴーストライターをした時に、私は"先生"格にされたので丁寧にしてもらい、経営する店やマンションの自宅で何度も会い話をしたが、要するに本物の極妻で、間近で見ると極妻の迫力なるものがあった。内縁の亭主の挨拶も受けたが、関東を代表する戦前からの侠客系の組長。
— 千坂 恭二 (@Chisaka_Kyoji) May 5, 2026
いくら「読み放題のサブスク」だとしても、もうこれ以上の細木数子の本はいいかな。3冊でお腹いっぱい。あとはネット注文した最初の本が届くのを待っている。
Kindle Unlimitedではその他にも細木数子以外の人が書いた四柱推命の本「一番わかりやすい はじめての四柱推命」や、「基礎からわかる 算命学の完全独習」などの占い関連本を読み始めている。
「地獄に堕ちるわよ」の中でも、占いを体得するには最低でも10年かかると言われているが、これまで過去に30年近く「風水」は私なりに独学で学んできたので、占いも学べそうだ。さらに「引き寄せの法則」や「思考は現実化する」に代表されるようなニューソート的な自己啓発書も、しばらく遠ざかっていたがまた読みたい。
どうしても細木数子に関しては、批判や怒りよりも「憧れ」が勝ってしまう。
「あんな風に、大金持ちになりたい」
と思ってしまうのは、私自身の弱さや愚かさなんだろう。
自分がにわか仕込みで占いや風水を学んでも、お金持ちにはなれるはずもないのに、
「あの人にできるんだったら、私にだって出来そうだ」
と思ってしまう。細木数子が見様見真似でベストセラーの占い本を書けたのなら、私にも書ける(そんなわけないのに)という気持ちになる。
それが細木数子だ。