映画「人のセックスを笑うな」を観た感想

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 曲がりくねった一本道、そこを女が自転車で遠ざかっていく。

 美大の長い廊下、そこを男が蛇行しながら遠ざかっていく。

 真っすぐ伸びた路地裏、そこをバイクに乗った男女が遠ざかっていく。

 遠ざかって、遠ざかって・・・・この繰り返しで、早送りしたくなる衝動を我慢する映画が「人のセックスを笑うな」だ。

目次

原作は山崎ナオコーラのデビュー作

 原作は山崎ナオコーラの同名小説。芥川賞候補にもなった。
 タイトルはWikipediaによると、
「この題名は本屋で同性愛の本が置かれた棚の前でクスクス笑っている人を見たときに思った言葉」
 だそう。


人のセックスを笑うな

 確かに同性愛を笑う人には、多様性が重視される観点からも「人のセックスを笑うな」と言ってやっていいと思う。

 ただ本作に同性愛は出てこない。
 なのになぜこのタイトルなのかはよくわからない。

 タイトルと中身のギャップで、印象づけようとしたのだろうか。

映画「人のセックスを笑うな」のあらすじ

 19歳の美大生・みるめ(松山ケンイチ)が、39歳の臨時講師・ユリ(永作博美)に恋をする話。みるめの描写にはなんとなく「初体験なのか?」という雰囲気がある。それゆえのめり込んでいくみるめだが、ユリはファム・ファタール系の魔性の女。みるめを夢中にさせておいて、学校も辞めるし、行方をくらます。

 そんなみるめをずっと見つめているのが美大の同級生えんちゃん(蒼井優)。おそらくみるめに片思いなんだろう。ユリをつかまえ、みるめをどうして誘ったのかと問い詰めると「だって、触ってみたかったんだもん」と言われて憤慨する。

 ユリがいなくなってから、えんちゃんがずっとみるめを支えるんだけど、みるめは魔性の女が忘れられない。そんな話。

映画「人のセックスを笑うな」の感想

 まず、原作の山崎ナオコーラが書いたのは何歳の時なんだろうと調べたら、2004年に出版されている。もちろんそれよりずっと前に書かれた可能性もあるけど、1978年生まれの山崎ナオコーラさんが26歳頃の作品だ。

 なるほど、どちらかというと「みるめ」の年齢の方に近い。
 原作もAmazonで試し読みしたら「オレ」という「みるめの視点」で書かれた小説だ。電子書籍なら594円だから、買って読もうかな、どうしようかな、と思っている。読書好きなら、この映画を見たら、原作を読みたくなると思う。

 作者が20代の時の作品と考えると、男女入れ替えて、みるめがもし19歳の女性だったら、と想像せずにはいられない。19歳の頃の私(現在50代の女)をみるめに投影すると、わからないでもない。

 世の中には魔性の女以上に「魔性の男」がいるんだ。特に30代から40代。
 私は経験ないけど、まさに友人はそういった魔性系の男性(会社の先輩)にのめり込んでいた。

 「だって、触ってみたかった」というユリちゃんのセリフは名言で、おそらく30代も後半になると、男も女も若者の「熱き血潮に触れて」見たくなるものだろう。50代の私だって、触れてみたい(キモいとか、言わないで)。

 向こうは遊びでも、こっちは本気。そんな物語。
 この映画の宣伝文句は「恋におちる。世界がかわる。19歳のボクと39歳のユリのいかれた冬の物語。」だったそうだけど、恋におちたのは若者だけで、39歳のユリは遊び、もしくは気まぐれとか暇つぶしとか、そういう話だ。

 私が若い頃に見ていたら、みるめの方に感情移入して共感できたかも。
 今の私の視点で見ると、あーねー、あるよねー、早く忘れたほうがいいよーと思う。

 あとこのストーリーみたいな経験はないけど、私が若いころ、何かの間違い、行き違いで「どうしてももう一度会いたいよ」とか「オレのことどう思ってるの」とか「なんでこの気持ち、わかってくれないんだよ」とか、男から言われたことだってある(遠い目・・・)。そういうパターンてさ、絶対に復縁はないよね。どんどん相手が「うざい」存在になるばかりでさ、復活しないって。

 映画のラストでそう思った。

 それにしても永作博美はずっとブラトップを身に着けているし、黒いタイツの上からパンツを履くという謎のスタイルで、いろいろ突っ込みたいところもあった。長回しやロング・ショット、あえてのボソボソ声の会話。アマプラにたった1件だけある星1個の辛口レビューにも「役者が何を話してるのか、まったく聞き取れない」とお怒りの感想がある。

 ロング・ショットや長回しは「ここぞ」というポイントで使われるなら効果的だろう。オープニングとかエンディングとか、出会いや別れの場面とか。しかし全編ロング・ショットの多用で、かなり間延びした印象は否めない。

 会話は聞く必要はなくて、映像美とか、全体の雰囲気とか、蒼井優の可愛らしさとか、松山ケンイチのすねたようなうわくちびるとか、そこだけ鑑賞すればいいのだと思う。

 都会ではなく、地方都市(群馬県桐生市周辺)で撮影している。監督の井口奈己さんは東京の秋葉原・上野・御徒町のトライアングルで育った(Wikipediaにある)人だそうなので、「田舎憧れ」みたいなのもあるのかな。山とか、あぜ道とか、田んぼとか、田舎育ちの私から見たら、うーん、そこに憧憬はない。田舎=素敵な場所と思ったら大間違いよー。田舎のほうが都会の何倍も怖い場所なんだからねぇー、と言いたくなる。

 とりあえず、原作は読みたくなった。
 あとタイトルで損してる。どうしてもエッチな話かと思ってしまう。私もそう思って18年間、一切観る気しなかった。じゃあ、私だったらどんなタイトル付けるかなと考えたけど、思い浮かばない。「みるめくんのうわくちびるが、ずっと尖っているその理由(わけ)は」かな。

 ちなみに原作のAmazonのレビューを見ていたら、タイトルを「人セク」と略している人がいた。確かに人前で言いづらいタイトルではある。「昨日映画観たんだ」「何を?」て聞かれて、このタイトルは言いづらい。だからって「人セク」とは、またなんとも珍妙な略称。

【配信はこちら】
  →アマゾンプライムビデオ【人のセックスを笑うな】

【永作博美・松山ケンイチ18年ぶりの共演ドラマのまとめはこちら】
 →『時すでにおスシ』1話~最終回までのあらすじ・感想・ロケ地まとめ

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